私たちがよく聞くホルモン(よだれが出ている人、焼肉のホルモン焼きではありません。)は体の様々な働きを調整する化学物質です。その重要な働きの一つがムードを調整することです。
ある種のホルモンは私たちの気分を良くしてくれる、つまりはハッピーにしてくれることで知られています。
そんな4つのホルモンは「ハッピーホルモン」とも呼ばれています。
今日はそんなスーパースター、ハッピーホルモンについてシェアします。
この4つのハッピーホルモンは
この4つの頭文字をとって、「D.O.S.E.(ドース)」と覚えましょう。
オーバードース、とかあまりポジティブには使われるイメージがないようなドースという言葉ですが、きっと覚えやすいはずです。
ドーパミン
ドーパミンは私たちをあるゴールに集中させ、全エナジーをそのゴール達成のためにそそがせ、ゴールに向かって行動を起こさせます。そしてそのゴールを達成したときにさらにまた生産されるホルモンです。このドーパミンが生産されることをドーパミンラッシュといいます。
例えば、早起きして、30分走ったら、すごく誇らしく気持ちがいいですよね。それは30分達成したことでドーパミンが生産されたことによる結果です。
イメージとしては、何かを達成したら、あなたの脳が、”Yay! Highfive ! ”という感じであなたとハイファイブをしている感じです。
ドーパミンはちょっとした中毒性もあります。美味しいスイーツのように、あなたをやみつきにするのです。
なので、あるタスクを達成して生産されたドーパミンにより、またその感覚を得たくて、同じ行動を再び起こしたくなることも、ドーパミンの性質のひとつです。またここでいうタスク(ゴール)は、月に200キロ走る、といった大きなものだけではなく、朝起きて5分読書をする、といったような、どんなに小さなタスクでも、ドーパミンラッシュを起こすことができます。
元Navy SEAL最高司令官のWilliam McRaven氏が、2014年の
テキサス大学の卒業式にて、“If you wanna change the world, start off by making your bed.”から始まるスピーチが話題になったことがあります。
「世界を変えたいなら、まずは朝一にベッドを整えることから始めなさい」というメッセージ。です。
朝一でベッドを整えることで、1日で1番はじめのタスクをコンプリートすることができ、タスクを達成すると、ちょっとしたプライドを得ることができ、また次のタスクを達成したくなる、そしてその次、その次の次、次の次の次の、、という風に続いていく。そして夜、1日を振りかえるとのその最初の小さなタスクを達成したことが、そのほかの多くのタスクの達成に結びついたことに気づくでしょう。というものでした。
この考え方も、ドーパミンの働きを理解していれば、なるほどなと納得できますよね?
ドーパミンは私たちを直接ハッピーにさせてくれるのではなく、ハッピーになれるよ!という約束をして行動を起こさせます。
人参をぶら下げて走らせるイメージの報酬獲得モードです。私たちはこの報酬獲得モードになるとリスクのことをあまり考えれなくなったり、自制心がきかくなくなるという怖いポイントもあります。
また、このドーバミンラッシュががうまく機能すればいいのですが、間違った方向に働くこともあります。
その1番の例が、あなたのスマホに次々とSNSから送られてくる通知です。
ツイッターやインスタグラムで、”いいね”をもらうととても嬉しいですよね。これは”いいね”をもらったことで、またその通知を見たことでドーパミンラッシュを経験しているのです。
そして、またこの”いいね”の通知をみてドーパミンラッシュを感じたく、3分おきにインスタやツイッターを何気なく開いているなんてことはないでしょうか?
アプリ開発者は頭がいいので、ありとあらゆる手を使ってこのドーパミンラッシュを再現し、みなさんをアディクトにしようとします。
おもしろいのは、わたしたちの脳は、どうやったら、なにをしたらこのドーパミンラッシュを引き起こすことできるかを記憶してしまうことです。なので、一度フェイスブックの”いいね”通知でドーパミンが生産できると知ると、脳はそれにむけて私たちに行動させようとします。
寝る前にベットにはいって、たった5分だけのつもりでインスタを開いたら、5分が10分に、10分が30分に、そして気づいたら2時間経っていた!なんてことも経験したことはあるのではないでしょうか?
さらにドーパミンはみなさんもご存知の通り、私たちを興奮させるホルモンですので、睡眠にはとても不適切なホルモンです。
こういったことから、次回必要以上にSNSで時間を費やしすぎたり、またはSNSに没頭しすぎて、大切な睡眠に影響が出始めたら、今日の話を思い出して、”おっと、これはドーパミンラッシュが起きてるぞ!”、と客観的に自分を観察しましょう。
とはいっても、友達と繋がっていたり、様々な人と繋がる上でもSNSはとても便利です。私もSNSは毎日のように使いますが、私がSNSをコントロールするのであって、SNSが私をコントロールする、とは絶対にならないように気をつけています。
具体的にはどうしているのか。
必要のない通知はオフにする。ということです。
本当に必要な通知はオンにしていますが、インスタグラムの”いいね”の通知なんてなくてもなんの問題もないので、オフにしています。
または、時間帯によってはメッセージアプリの通知をきっています。仕事であっても、友達であっても、メッセージを見てしまうと、ドーパミンが生産され、睡眠の妨げになります。なので、就寝2時間前にはメッセージアプリの通知をきります。
本当に緊急事態なのであれば、相手も電話をかけてくるはず。それ以外のメッセージアプリで自分に入ってくることは、緊急ではないことほとんどです。
アイホンはiOS13より「スリープモード」がリニューアルされて、簡単に通知などをオフにすることができるようになっています。
そして、就寝最低1時間前にはエアプレーンモードにする。通知の音やバイブを聞くだけでも、人によっては、ドーパミンがしっかりと生産されてしまいます。
このドーパミンの働きを知ったので、うまくドーパミンラッシュを味方にしていきましょう!
オキシトシン
人とハグをしたり、恋人とキスをしたり、赤ちゃんに触れたり、家族や恋人、友人と一緒に時間を過ごしたり、ペットと触れ合ったり、、主に体と体が触れ合うことから生産されるホルモンのため、よく”ラブホルモン”と呼ばれます。
このオキシトンがでると、他者への信頼、社交的恐怖心の削減、そして他者に対して優しくなれたり、また、他者が考えていること、他者の気持ちをよく理解できるようになる、といった効果があるようです。
精神学者のRanjan Patel博士がいうには、生態的にいうと、人間はみなこの他者に触れたい欲求とともに産まれ、この体と体と触れ合いがなければ、今頃この地球上から人間は絶滅していただろうといわれるほど重要なことのようです。
電話とオキシトシン
オキシトシンの性質をさらに明らかにした面白い研究があります。(*参考記事:Social vocalizations can release oxytocin in humans by THE ROYAL SOCIETY PUBLISHING)
2012年にアメリカのウィスコンセン大学の精神学者レスリーさんは、8~9歳くらいの女の子に、人前で数学の問題を解かせました。
数学の問題を解かせる前に、被験者のストレスのレベルを示す指数として、唾液中のコルチゾールの量を調べました。その後被験者の女の子を4つのグループ分け、試験後に、それぞれ異なるソーシャルコンタクトをうけさせました。
母親が実際に娘に直接会いにきた。
母親からの電話。
母親からの携帯のメッセージ
なにもなし。
その結果、コルチゾールと、オキシトシン(ラブホルモン)の量を調べたところ、、、
1のグループに、コルチゾールの最も大きな減少と、オキシトシンの急激な上昇がみられました。
気になる他のグループですが、2の電話のグループも、1のグループまではないが、コルチゾールの量の減少と、オキシトシンの上昇がみられたようです。
3のメッセージだけのグループは、試験前とくらべて、リラックスした様子がまったく観察されず、4の母親からなにもなかったグループとほぼ同じだったようです。
この研究が明らかにしたのは、実際に会わずとも声を聞くだけでオキシトンが生産されるということです。
ではZOOMなどを使ったビデオコールをすればもっとオキシトンが生産されるのでしょうか?
カリフォルニアのクレアモント大学院のポール・ザック博士による研究によると、実際に会って会話するのと比べ、ビデオ電話は80%の割合でオキシトシンの生産には効果的だと発表しています。
しかし、それ以上にZOOM fatigue(ZOOM疲れ)によるマイナス点を考慮すると、音声のみでの会話の方が良いかもしれません。
オキシトシンのネガティブな点
ではこんなオキシトンもネガティブに働いてしまうこともあるのでしょうか?
それが、Oxytocin Overload(オキシトン・オーバーロード), オキシトシンが必要以上に生産された状態です。
こうなってしまうと、縄張り意識、テリトリー意識が産まれてくるようです。
いい例が、自分の親友や仲のいい友達が、自分とは違うグループの人とつるんでいたら、それをみてジェラシーな気持ちを抱いたり、不快に感じてしまうことです。
Ethnocentrism(エスノセントリズム)という言葉を聞いたことありますか?これは自分のカルチャーが他のカルチャーより絶対的に優れているという考えで、他者を理解しようとしないことです。
例えば、海外にいっても、日本のやり方が絶対に優れていると考え、その国の習慣に従わなかったり、留学先でも、日本人の人としかつるまなかったり。
これもOxytocin Overloadのいい例のひとつなのです。
自分の親友が他のグループと仲良しそうにしているのをみてジェラシーを感じたら、一歩ステップバックして、あ、オキシトンオーバーロードの仕業だ!と客観的に観察してみましょう!
セロトニン
セロトニンは”ナチュラルな精神安定剤”と考えられていて、気分の低下や心配事を解消してくれます。それと同時に、睡眠、食事、消化といった機能も助けてくれる脳内化学物質でもあります。
このセロトニンの量が一定値だと、わたしたちは落ち着きや幸せを感じたり、集中することができます。
またセロトニンは私たちをハッピーに感じさせてくれるホルモンとして知られることから、
うつ病患者の薬は、セロトニンをどうにかして生産するような仕組みでつくられたものが多いようです。
さらに、もうひとつ忘れがちなセロトニンの働きは、私たちの体内時計を正常に保ってくれるという働きです。
しっかりと体内時計をサーケディアンリズムに整えることで、朝には行動を起こすのに必要なコルチゾール、夜には睡眠に必要なメラトニン、というように身体は必要な時に必要なホルモンを生産できるようになります。
セロトニンの生産方法
ではどうすればセロトニンを生産できるのでしょうか?運動をするということは当たり前すぎるのでそれ以外の方法で疎かにしがちなのが、太陽の光を浴びるということです。
太陽の光を浴びることで私たちの脳はセロトニンを生産します。
国によっては冬の間に太陽の光を浴びることができずうつになってしまう人(季節性感情障害/SAD:Seasonal Affective Disorder)がでてしまうのも、十分なセロトニンを生産することができないことが理由です。
私たちの目には、光を察知する特別な受容体がついていて、(ソーラーパネルのようなイメージ)これが光を察知すると、脳にセロトニンを生産するように指示をだします。なので、朝外にでて光を察知し、セロトニンを出すことが、みなさんの睡眠にも、そしてムード向上にも効果的なようです。
ここであなたは、「光がぐらい毎日嫌でも浴びてるよ!部屋のライトとか、電車の中とか。」と思うかもしれません。しかし実際の太陽の光と人工の光には大きな違いがあります。なんと、屋内の光は屋外にでて浴びる光の100/1の眩しさと言われているようです。曇りの日に屋外で浴びる陽と比べても、屋内の人工的な光は10/1の眩しさのようです。
これは、わたしたちの目が光の眩しさの変化に、うまく対応できるようにできていることが原因で、実は私たちが気づいていないだけのようです。
ある会社で、陽の光を浴びることができる窓のアクセスがある社員と、アクセスがない社員を比べたところ、アクセスがない社員は、173%の割合で浴びる自然の光が少なく、毎晩平均で46分睡眠時間が少なかったようです。
また食べ物によって一時的にセロトニンの量を増やすこともできます。
代表各は、炭水化物です。
炭水化物は、トリプトファンというアミノ酸を脳に取り入れ、セロトニンに変換させてくれる働きがあります。
炭水化物を食べたあとに気分が少しよくなる、少しハッピーになれることも納得。
もっと具体的な食べ物だと、バナナ・くるみ・オートミールがおすすめです。
エンドルフィン
エンドルフィンはモルフィン(痛み止めの薬)のように、痛みを和らげ、ムードの向上を演出してくれる脳内化学物質です。
ストレスや痛みを経験している時、激しい運動をしている時、またはオーガズムを経験しているときに分泌されます。
エンドルフィンを自然に放出する方法は、運動をすることです。
よく走る前は痛くて気になっていたふくらはぎの痛みが、走りだしてちょっとすると全く気にならなくなった、なんてことはありませんか?これはエンドルフィンの仕業です。
また出産が近い妊婦さんにもよくエンドルフィンの量が増え、出産後そのエンドルフィンの量ががくっと下がるという現象も観察されています。
ムードの向上、痛み止めの効果意外にも、おもしろい効果が報告されています。
またまだこれは動物実験で証明された段階ですが、エンドルフィンが食欲を抑えてくれるという発見もあります。
運動をする前はお腹がすいていたような気がするのに、運動した後はその食欲がなくなっていた、なんて経験はありませんか?
「笑う門には福来る」はホント!?
誰もが知っている”いつも笑いが絶えない家には自然と幸福がやってくる”という意味のことわざですが、実は科学的にも理に適った話のようです。
フィンランドのTurku大学で行われた研究により、笑うことでエンドルフィンの量が増えることが発見されました。(参照:Social Laughter triggers endogenous opioid release in humans by THE JOURNAL OF NEUROSCIENCE)
その他にも、オックスフォード大学で、エンドルフィンは痛み止めのような働きがあることを逆手に、笑うことが痛みをどれくらい和らげてくれるのかを観察した研究でも効果があることが証明されています。
上記のフィンランドで行われた研究の研究者がとても面白い考察も公表しています。
ゴリラやチンパンジーなど人間以外の霊長類は、お互いに毛づくろいをすることによって社交の輪を維持しているというように考えられています。
それに対して同じ霊長類の人間が生き延びでいくたみに必要な社交の輪はゴリラやチンパンジーが必要な社交の輪とは比べ物にならないくらい大きくないといけません。
そんな時に毛づくろいだとすごく手間も時間もかかってしまうが、これにとって代わって有効的な方法が”笑うこと”ではないかと考えています。
実際のところゴリラは毛づくろいをしたあとにエンドルフィンが放出されるそうです。エンドルフィンは痛みを和らげ、安全な気持ちにさせてくれることから社交的な関係を築き上げる上でとても重要なホルモンであるとも考えられています。
周りの人につられて笑ってしまうのも納得ですね。
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